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人事のブレーン社会保険労務士レポート第176号
働き方改革で企業がまず一番に取り組むべきこと

1.はじめに

人材不足の中で、政府主導で働き方改革の波が押し寄せています。国会審議は進んでおりませんが確実に企業経営に影響を及ぼしています。

まず、何から始めればいいのか。

ここが分からないと進みません。
中小企業にとって働き方改革は非常に厳しい問題ですが、人材確保の点からは出来ることからしていく必要があります。
今回は「働き方改革」についてまず何をすればいいのかを掘り下げていきたいと思います。

2.働き方改革は「仕事の任せ方改革」

「忙しい社員は、人に仕事を教える時間もない」
これは私の経験上言えることで著書の中でも繰り返しお話をしてきました。
仕事を他人に振るということは、その仕事を他人に教えなければならないですし、そのクオリティーも任せる側の忙しい社員が満足するものでなければなりません。

この2点が簡単なようで出来ないのです。
例えばエクセルで資料を作ることとしましょう。
その資料が社内会議で使われるものであれば内容が分かればいいのです。しかしお客様にプレゼンするための資料であれば見やすさや分かりやすさが求められます。
社内会議では資料ですが、お客様へのプレゼン資料は「資料+広報」的な要素が出てきます。
しかし社内会議でしか使わないにもかかわらず広報的な資料であったり、必要な数字が明確にされていないから不要な数字なども記載しなければならず資料の作成に時間がかかる。
この様な事はよくあるのではないでしょうか。
働き方改革は「仕事の任せ方改革」であるとお話ししましたが、この様に「任せる側」の指示が明確ではない為に資料作成に時間がかかってしまうことがあります。
明確に指示することで作業時間は短縮できるのです。
「無いよりあった方がいい」「それぐらいわかるだろう」という気持ちが任せる側にあったら作業時間は減りません。
この意識を持たなければ絶対に作業量は減りません。
また、情報システムによりペーパーレス化をしているのに、不安だから紙媒体でも残しておくと言った事や、簡略化、効率化する際のリスクだけが強調されるケースも多くあります。それが原因で作業の効率化が進まないのです。
何事にもリスクはつきものです。
このリスクに対して決断できるのは経営者しかいません。経営者が一歩踏み出す勇気が必要なのです。
今までのやり方を変えるということは非常に勇気がいることですし、不安です。しかしある程度議論し、リスクの洗い出しと対策が済んだら進めるべきです。弊社も50年やってきた紙媒体中心の業務を電子申請中心の業務にすることは勇気がいりましたし、手間もコストもかかりました。
しかし業務効率はよくなり、マイナンバーが記載されている手続き書類を持ち歩くことも少なくなり情報漏洩のリスクは減ったのです。
不安だからと二重三重のチェックをすることは大切です。しかしそのチェックを効率的になおかつ確実に行えればいいだけのことで、これは実際に効率化を進めながら同時進行でやらなければわかりません。
やりながら考える姿勢が何よりも大事なのです。

3.社員を知る

社員が何時にきて、何をして、何時に帰っている。
これを知らなければ何もできません。
働き方改革を進めるにあたって大切なことは「社員のことを知る」ということです。
これをやらなければ残業時間を削減することはできません。
なぜならば、何を減らせば社員の負担が減るのかが分からないからです。
そして減らせるものがあれば減らす。人に任せられるものがあれば任せる。
この作業をしていかなければなりません。
社員の思っている「負担」と経営者の考える「削減できるもの」が一致しなければならないのです。
いくら経営者が作業を軽減してあげても、それが社員にとって「ありがたいこと」「作業量が減る」ことでなければまったく意味がありません。
ですから社員を知ることが何より大事になってくるのです。
当然、社員がその効果を知らない故に「社長、それじゃないんですよ」と思っているケースもあります。その場合にはしっかりと社員にその意義を伝えることが大切なのです。
ドラッカーはコミュニケーションについて一方的な情報発信ではなく「相手に何をして欲しいかの要求である。人を動かす手段だ」と述べています。人を動かすためには間違いなく意図を理解してもらい、それに対して何を思うかを把握することが大切なのです。

4.社員とどうコミュニケーションをとるのか

社員とコミュニケーションをとることは簡単ではありません。一昔前は問題社員をどうすればいいかという相談が多かったのですが、昨今ではそれに加えて「普通の社員との向き合い方」についてのご相談も受けます。
それだけ多様な価値観を持った社員と業務を通じてだけのコミュニケーションでは把握が出来ない時代になってきたのかもしれません。
しかしこの点は「非公式なコミュニケーション」で対応できるのです。
会議では発言しないのに、立ち話だと色々良いこと言ってくるんだよねと仰る経営者の方が多いのです。
これは会議という公式的な場で議論をする訓練を日本人はしていないからやむを得ないのです。
皆様も色々な団体の会議に出席された経験をお持ちだと思います。総会等で発言する方は殆どいらっしゃりませんよね。これが日本人なのです。根回しの文化で育っていますからいきなり会議で発言しろというのは難しいのです。
根回しの文化ですから非公式な場所での意見交換はできるのです。

しかしこの「非公式」の概念が変わってきているのです。社員旅行といったレクレーション、会社行事である飲み会は今の社員は「公式行事」と考えています。
公式行事ですから本音を言えませんし、負担を感じている社員も多いでしょう。非公式とは立ち話や移動中の雑談等での会話なのです。
朝「おはよう」の後にひとこと付けるだけで変わってきます。非公式なコミュニケーションで社員の本音を把握したうえで、何をすれば作業量が減るのか。
負担感を軽減できるのか。これを考えていかなければなりません。
経営者が一人で悩んでも解決しません。
社員と一丸となって「働き方改革」という難局を乗り越えていきましょう。

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