コラム社会労務の基礎知識

人件費管理②【基本給の管理】

1. 3年選手と10年選手の能力の差は?

入社したばかりの方と、10年働いている方の能力差は大きくあるでしょう。
では、3年働いている方と、10年働いている方の能力差はどの程度あるでしょうか。
実は、賃金を決定する場合に、この検証は非常に重要です。

2. 経営者の役割

経営者として人事で行う仕事は大きく分けて3つあると考えます。
第一は、教育。第二は、予算管理。ここまでは、誰もが心がけているでしょう。
しかし、もう一つ重要なことは「人を割り切って使うこと」です。
この視点がなければ、適正な人件費に保つことは出来ません。

3. 何年選手以降は能力差がないのか

入社3ヶ月の方と、入社3年の方との実力差は大きくあります。入社3年の方と、入社10年の方の実力差はあまりありません。
この様な場合、入社3年以降の賃金の上昇率を低くしなければ、適正な人件費を保ち続けることは出来ません。
入社から、3年までの賃金上昇率を高く設定し、それ以降の賃金上昇率を低く設定する。
では、労働者は使い捨てって事なのか。
そうではありません。
教育と予算管理が経営者にとって大切なことであると前にふれました。
一人で稼ぐ売上げが、入社3年以降では変わらないとしても、数人のチームをまとめて、教育や予算管理を行って、そのチームの売上げを向上することが出来れば、会社の業績を更に向上させることが出来るのです。

4. 人を割り切って使うこととは

トップセールスマンでも、一人で売上げを上げている訳ではありません。必ず他の部署と関わりますし、商品開発で売れる物をつくった凄い人もいるわけです。
この点を理解して、若手を育てながら、複数の労働者を管理して会社の利益に貢献していく人材を役職者として登用するわけです。
基本給については、入社3年以降の上昇率を低く抑え、役職手当を多くしていけば、人をまとめなければ賃金は上がらないという方向性を示すことが出来ます。
そして、自分の仕事だけをこなしていても賃金は上がりませんよという仕組みにすることが重要です。
どんなに業務についてはベテランであっても、自分の仕事しかしないという労働者については、賃金は頭打ちになる、これが「人を割り切って使う」ということです。
労働者の個人的な事情を鑑み、この様な労働者であっても賃金を上げるという事をしている会社も多いです。
それは会社の考え方ですから、私が否定することではありません。
しかし、最低賃金が上昇した結果、初任給が高くなってしまいました。その結果、そもそもの賃金が高くなったために、昇給自体を低く考えないと人件費は増えるばかりです。
賃金の上昇を価格転嫁できない訳ですから。
会社の幹部候補生としての気概を持ち、複数人をまとめて業務を行える人材でなければ、高い賃金を支給する余力はないのです。

5. まとめ

基本給の上昇を、一定程度の年数が経ったら抑えなければならない事の理由をお話ししました。

「初出:週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第12回 No.727 2010.11.23号」

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