人事のブレーン社会保険労務士レポート第186号
懲戒解雇の注意点
1.はじめに
「あんな社員は懲戒解雇だ」というご相談をよく受けます。
解雇について誤解がありますので、今回は解雇の種類についてお話ししたいと思います。
解雇の種類とは「普通解雇」と「懲戒解雇」があります。
普通解雇とは勤怠不良や能力不足等の理由で解雇する場合です。
懲戒解雇とは懲戒処分として解雇する場合です。
この違いは何でしょうか。
2.懲戒解雇のデメリット
懲戒解雇とは懲戒処分の一つです。
懲戒事由に該当して、その事由が解雇相当であるということが必要です。
懲戒解雇する際には「解雇理由」を示さなければなりません。
そして解雇理由は後付できません。
例えば解雇相当事由があり、本人に懲戒解雇を通知したところ、本人が納得せずに会社の備品を壊しました。
この様なケースはたまにあります。
懲戒解雇を通知した後に行った行為は、通知した懲戒解雇事由に含めることはできません。
最初の懲戒解雇事由とは別に懲戒処分を行う必要がありますが、解雇通知した後なので懲戒処分をしても意味がありません。
横領事案とか社内での暴力事案など、それ自体で十分に懲戒解雇事由になりうる事案以外では、懲戒解雇するべきではないのです。
総合的に見て解雇事由に該当する場合がほとんどであり、特定の事由で懲戒解雇することは非常にやりずらいのです。
3.懲戒処分の注意点
懲戒処分とは一事不再理の原則が適用されます。
一事不再理とは一度処分された事案について、再び処分されることはないということです。
一回目の懲戒事由があり、懲戒処分しました。
二回目の懲戒事由があり、一回目の事由と併せて懲戒解雇をしました。
このケースでは、一回目の懲戒事由で処分をしているために二回目の懲戒処分では一回目の懲戒事由を持ち出して処分することができません。
再発が懸念される場合には一回目の懲戒事由が発生した際には処分を保留にして、次回同様の行為があった場合には今回の事由と併せて処分するという方法をお勧めしています。
一回目の懲戒事由が解雇相当であったとしても減給処分をしてしまった場合には、この件を掘り返すことはできません。
処分の保留をしておき、賃金については能力の評価を行い新たに低い格付けをして賃金を適正な水準まで下げるということはできるのです。
ペナルティーである懲戒処分と能力の再評価は別物です。
この点を踏まえて考えていかなければなりません。
4.まとめ
この様な理由から懲戒解雇というのは非常に制約があり、普通解雇を検討すべきなのです。
懲戒解雇といえども労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」を受けなければ解雇予告手当又は解雇予告が必要になります。
解雇という慎重に行うべき処分について、その性質を理解して正しく通知を行うことが必要になってくるのです。