KNOWLEDGE OF PERSONNEL AND LABOR

人事・労務の知識

人事のブレーン社会保険労務士レポート第184号
10連休の労務管理上の注意点

1.はじめに

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて本年は天皇陛下が譲位され、皇太子殿下が即位されます。
皇室の弥栄を心よりご祈念申し上げたいと思います。

それに伴いまして本年は10連休があります。
4月27日土曜日から5月6日までの期間です。
金融機関もお休みです。
保育園についても4月28日からの9連休。働く女性にとっては頭の痛い問題です。

私は子供の通う小学校のPTA会長を務めております。
毎年年末から年明けにかけて来年度の学校行事の件で学校とPTA行事や地域行事の調整を行うのですが、この連休前に学校側はある行事を持ってきたいという申し入れがありました。
我々民間の感覚ではこの大型連休前はとてつもなく忙しい。
当然10連休を取れるなんて思っていません。
しかし公務員の感覚ではそうではないのですね。
これにはびっくりしました。
その後東京都のOBの方とも打ち合わせをしたのですが同様の感覚でした。
民間の経験がない公務員はこのような感覚で、それに基づいて政策を決めているのであれば我々民間企業にとって違和感のあるものになってしまうであろうと強く感じた次第です。
レジャー産業や小売り、外食は当然連休中も営業しています。
ここで働く人たちを労働者と思っていないのではないかと疑問に思う休暇政策です。

この10連休の取り扱いについて年末に多くの質問が来ました。

「祝日は休ませなければならなのか」というご質問です。

今回はこの点をお話ししたいと思います。

2.労働基準法による祝日の考え方

労働基準法では一日8時間、一週40時間の範囲内で所定労働時間を設定することになっています。
また休日に関しては一週に一日の休日を与える必要があります。
一日8時間の所定労働時間を前提とすると5日間で一週の所定労働時間の上限時間である40時間に達してしまうので週休2日が必要となるだけで、一日の所定労働時間が6時間30分であれば週6日労働が可能になるのです。
これをクリアしていれば使用者は所定労働時間や所定休日を自由に設定できるのです。
労働基準法には祝日を休ませなければならないとはどこにも書いてないのです。
祝日であったとしても労働日として指定することが出来ます。

3.国民の祝日に関する法律

国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)という別の法律の第2条で16日の祝日が定められています。
第3条第2項により「その前日及び翌日が国民の祝日である日(「国民の祝日」でない日に限る)は休日とする」と規定されているために5月1日が祝日となりますと「みどりの日」と5月1日に挟まれている4月30日、憲法記念日と5月1日に挟まれている5月2日が休日となるのです。

4.就業規則等による休日

前述のとおり国民の祝日をその企業の所定休日としなければならないわけではないとお話ししました。
しかし就業規則等で「祝日を休みとする」と記載している場合があります。この点は注意が必要です。
会社の所定休日及び法定休日については前述した労働基準法の範囲内で自由に決定することが出来ます。
法律で決められる範囲より、より狭くすることが就業規則に記載されていることがあります。
労働基準法では「祝日を休ませなくてよい」訳ですが、就業規則で「祝日は休ませます」と記載していれば「休ませなくてはならない休日」となります。
私は就業規則を見直す際には、この様な規定を必ず指摘します。
祝日に出勤する可能性が100%ないと言い切れるのか。
100%ないと言い切れるのであればいいのですが、出勤する可能性があれば「原則として休日とするが、業務の状況等を鑑み労働日とする場合もある。
ただし、この場合には当該日の属する賃金計算期間の初日より前に該当する労働者に対して書面で通知することとする」等の文言にしておく必要があります。
就業規則でこの対策がなされていれば10連休中に出勤日を設けても労働基準法の範囲内であれば別途賃金を支払う必要はありません。
しかしこの対策がなされていない場合には会社が「労働基準法による権利」を一部制限していることとなり、祝日に働かせることはできなくなります。
ただしこの場合は休日出勤手当を支払えば働かせることが出来ます。

5.休日出勤手当について

(1)法定休日

労働基準法では週に一回休日を与えなければならないとなっています。
これを法定休日というのですが、法定休日に働いた場合には休日出勤となり、1.35の割増率で計算した休日出勤手当を支払う必要があります。

(2)割増賃金を必要とする所定休日労働

労働時間に関しては一日8時間、一週40時間となっておりこの範囲内で所定労働時間を設定しなければなりません。
しかし変形労働時間制を適用することにより例外はありますが本稿では省略をいたします。
一日の所定労働時間が8時間とすると5日間で40時間を消化してしまいます。
法定休日は休んでおり、この週6日間労働したとすると40時間を超えた時間に対する割増賃金が必要になります。
これを所定休日労働といいます。
ですから残業と同様の扱いになり、1.25の割増率になります。
法定休日に労働させた場合と違いますが、就業規則等で所定休日労働についても1.35の割増率で賃金を支払うという規定をしている企業を見かけます。
この場合にはその規定に従うこととなります。

(3)割増賃金を必要としない所定休日労働

例えば例年では休日ではない4月30日(火曜日)、5月1日(水曜日)及び2日(木曜日)を労働日とした場合で、就業規則等の所定休日に関する規定で「祝日を休みとする」と記載されているケースを想定しましょう。

この週は3日間しか働きません。
ですからこの週は24時間しか働いていないわけです。
一週40時間を超えていませんのでこの24時間の労働に対しては割増賃金の必要はありません。
あくまで実労働時間が一日8時間、一週40時間を超えた場合と法定休日労働に対して割増賃金の必要が出てきます。
その範囲内であれば割増賃金の支払いは就業規則等で「所定休日に出勤した場合には割増賃金を支払う」等の規定をしていない限りする必要はありません。
しかし、所定休日に出勤したわけですから賃金の支払いは必要になります。
この計算方法は、割増賃金を計算する際に「1.25」や「1.35」を乗じる単価になります。
要するに「割増率をかける前の単価」を支払わなければならないということになります。
時間外手当は支払う必要はあるが、割増率を乗じる必要はないということになるのです。

6.対策

本年は皇室の行事があり、その関係で10連休となりました。
祝日については3日増えるわけです。
しかし医療機関は処方箋が最大14日ということで連休中に診察日を設けなければ患者さんが困るということがあり診察を行うところもあります。
あくまで通常のケースを想定しているわけであり、本年は例外なわけです。
この点を労働者に説明をして「祝日だけど、例年は祝日ではない4月30日から5月2日までは営業します。所定労働日ということでご理解いただけないだろうか」と交渉してみるのもいいと思います。
実際にはそのように交渉をして了解を得た会社もあります。
合意を前提にこの様な対策を立ててみることもいいでしょう。
10連休で景気が良くなると言われていますが仕事量は変わりません。
公務員の発想で民間を振り回すことは勘弁いただきたいと思います。

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