人事のブレーン社会保険労務士レポート第168号
平成29年10月1日施行 育児休業の改正について
1.はじめに
待機児童の問題は国会や地方議会でも議論されいます。保育園には入れないが為に就業できない労働者をどの様に救済していくのか。
保育所の数を増やせば解決するのか。
保育所を増やしても保育士が不足しています。
ハードは出来ていてもソフトの育成が追いついていません。
質の高い保育を担保するためには保育所を増やすだけでは不可能なのです。一方で保育所は年度で動いています。
ですから年度初めの4月には比較的入りやすいという傾向があります。
従来の1年の育児休業では9月に生まれた子供は4月で7カ月。
保育園に比較的入りやすい4月では1年に満たないのです。
そして保育所には入れない場合には1歳6カ月までの育児休業が可能になりました。
しかしこの9月生まれのケースでは4月は1歳7カ月になっており、3月に育児休業が終了してしまいます。
この様なケースで4月まで育児休業が取れるように今回の改正がなされました。
以下で見ていきたいと思います。
2.1歳6カ月までの延長
育児休業は子が一歳になるまで取得可能です。
パパママプラスの場合には子が1歳2カ月になるまで取得可能ですが、今回の法改正とは別の話ですので、パパママプラスは議論しません。
子が一歳になる際に以下の要件を満たせば1歳6カ月まで育児休業を取得できる事となっています。
・申し出に係る子について、当該労働者又は配偶者が、当該子の1歳に達する日において育児休業をしている場合
・保育所等に入所を希望しているが、入所できない場合
・従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり、1歳以降育児に当たる予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合
3.2歳までの延長(今回の改正)
上記の通り救済措置があったのですが、誕生月によっては保育園に入りやすい4月をまたがないケースもあり、それに対応する為に子が1歳6カ月から2歳までの延長を行う事となりました。
この注意点は、あくまで1歳時点で保育所には入れないので1歳6カ月まで延長する。
しかし、保育所に入ることが出来ず1歳6カ月を迎えてしまった。よって、この場合には更なる救済措置として2歳まで延長しましょうという制度です。
この救済措置の対象者は1歳6カ月までの延長の場合と同様です。
4.誤解されがちな点
育児休業が2歳まで延長をされたという理解をされている方が多いですが、原則1歳は変わりません。
保育所には入れないことが大前提でありますので、保育所に入る努力をしなければなりません。
ですから、子が1歳に達した時点、子が1歳6カ月に達した時点で市町村長からの「保育園に入れないという通知」が無ければ雇用保険の育児休業基本給付金は延長できません。
保育園に入る努力をしたけれども入れなかった事実が必要なのです。
既にご説明したとおり、子が1歳になるまで育児休業を取得する権利があります。しかし保育所は4月から新年度で、0歳児や1歳にはこの4月を逃すとなかなか入れません。
そうなると誕生月によっては子が1歳になる前に職場復帰をせざるを得ないという労働者を救済することが大きな目的なのです。
ここを誤解してしまうと法的な要件を満たしておらず、育児休業基本給付金等がもらえないという事になってしまうのです。
5.まとめ
労働力不足はどの業種でも深刻であり、働く意欲のある育児をしている女性労働者をどの様に活用していくのか議論されております。
弊社でもフルタイムの正社員に加え、残業無しの正社員、短時間正社員というコースを設け採用活動を行っています。
就労意欲の高い労働者を確保するためには「あるべき論」ではなく、業務を細分化して担当業務の見直しが必要になります。
この点は拙著「経営者の知らない人材不足解消法」に詳しく書いてありますのでご覧ください。