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人事・労務の知識

人事のブレーン社会保険労務士レポート第156号
誤解の多い休日振替とその対策方法

1.はじめに

 前回は「誤解の多い代休制度」と題して執筆を致しました。代休制度の問題点と運用の注意点を掘り下げました。  今回は「休日の振替制度」と「残業手当及び休日出勤手当」についてお話しします。

2.休日の振替について

(1)休日振替の仕組みと注意点

休日の振替とは、あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わり他の労働日を休日とする制度であり、休日労働の代償として休日を付与する代休とは性質が異なります。
休日の振替とは、あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わり他の労働日を休日とする制度であり、休日労働の代償として休日を付与する代休とは性質が異なります。
要件とは「勤務の必要がある場合には、他の日に振り替えることが出来る旨を就業規則に定めていること」及び「所定休日の到来する前に予め振替休日を具体的に示して休日の振替を行うこと」です。(昭63.3.14基発第150号・婦発第47号)
法定休日を付与していれば、予め振替休日を特定して休日と労働日を振り替えることで割増賃金を支払う必要はなくなります。
ただし、休日の振替により週40時間を超えてしまった場合にはその超過した労働時間については割増賃金の支払いが生じてしまいます。
具体的には第2週の土曜日の所定休日を翌週である第3週の水曜日に振り替えた場合には、第2週は6日労働となり、48時間が所定労働時間となってしまいます。
よって40時間を超えた8時間に対して割増賃金が必要になってくるのです。週をまたぐ休日の振替には注意が必要です。

(2)変形労働時間制における休日振替制度の注意点

通常の労働時間制度では1週40時間の所定労働時間を超過した場合には残業手当を支払う必要があります。
では、1週40時間を超える所定労働時間の設定が可能である変形労働時間制における休日の振替についてはどの様に考えるのでしょうか。
変形労働時間とは「あらかじめ業務の繁閑を見込んで、それに合わせて労働時間を配分するもの」(昭63.1.1基発第1号・婦発第1号)、「変形期間を平均して週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること」(平3.1.1基発第1号、平9.3.25基発第195号)とされています。
変形労働時間制度は、法律上業務の繁閑を予測して変形期間における労働時間を配分し作成した勤務表を、変形期間が開始されてからの任意の勤務表の変更は原則としてできないとされています。
一ヶ月単位の変形労働時間制について規定している第32条の2関係の通達 でも以下の通り明示されています。
「休日振替の結果、就業規則で一日8時間又は一週40時間を超える所定労働時間が設定されていない日又は週に一日8時間又は一週40時間を超えて労働させる場合には、その超える時間は時間外労働となる」(昭63.3.14基発150号、平6.3.31基発181号)、「完全週休2日制を採用している場合、ある週の休日を他週に振り替えることは、休日の規定の関係では問題ないが、例えば一日の休日を他の週に振り替えた場合には、当該週二日の休日があった週に8時間*6日=48時間労働させることになり、あらかじめ特定されていない週に週40時間を超えて労働させることになるので、8時間分は時間外労働となる」(昭63.3.14基発150号、平6.3.31基発181号)とされています。
週の考えについては通達通りですが、一日の考え方も週と同様になるのです。例えば水曜日の所定労働時間が6時間、土曜日の所定労働時間が10時間であった場合、水曜日と土曜日を振り替え、水曜日の所定労働時間を10時間、土曜日の所定労働時間を6時間とした場合には、水曜日はもともと8時間を超える所定労働時間として特定されていないので、水曜日は8時間を超えた2時間分の労働に対して割増賃金を支払わなくてはならないとなります。土曜日の所定労働時間を6時間とする恩恵は受けられないということになります。

(3)まとめ

結果として変形労働時間制であっても週をまたぐ休日の振替は難しく、残業手当の支払い義務が生じることとなるのです。

3. 割増賃金を支払うという選択肢

前述の通り、休日振替にしても、前回お話しした代休制度であっても残業手当の支払いは必要になる可能性が高いのです。
そもそも何故「休日の振替」や「代休」の問題が出てくるのかというと、「忙しいから休めない」ことが原因です。
代休や振替休日を取らせることで割増賃金の発生を防ぎたいという理由で制度を運用していますが、そもそも忙しいわけですから同一週内に振替休日を行うことは難しいのが現状です。
また、振替休日や代休取得を強引に進める結果、元々忙しい職場においてはますます残業が増えてしまいます。
結果として消化できない振替休日や代休が溜まってしまい、退職時に買い取っていたり、退職時に年次有給休暇に加えて当該休日を消化させてから退職をするというケースが多いのです。
休日を中途半端に付与し、退職時に買い取りを通じて割増賃金を支払っているという状態になります。この状態は労働基準法第24条及び第37条違反であり、割増賃金の支払い義務を履行していない所謂「未払い賃金」が存在している状態なのです。
であれば「振替休日」や「代休」を廃止して、割増賃金を支払うことにより「振替休日や代休を強引に取得させて他の労働者の残業時間を増やす事態の解消」「取得できない振替休日や代休の解消」「未払い賃金の解消」を進めていく方法が企業のコスト面から考えても最善の場合があります。
「振替休日や代休の活用」に加えて「活用しないで割増賃金を支払う」ことの費用面を考えて制度を選択することをおすすめします。

4. まとめ

振替休日や代休の誤った認識により、コストが増えている企業が多いのです。制度を正確に理解していただき、コスト面をしっかりと算出し最善の方法で運用して頂きたいと思います。

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