人事のブレーン社会保険労務士レポート第153号
マイナンバーと扶養控除申告書について
1.はじめに
マイナンバーに関しては一時期の関心の高まりも落ち着いてきたように感じます。
平成28年1月から雇用保険制度においてマイナンバーが必要となる予定でありましたが、未だハローワークはマイナンバーを本格的に収集する体制を敷いていません。
その影響もあってマイナンバーへの関心は薄れているように感じられますが、政府はマイナンバーの準備を着々と進めています。
2.マイナンバー制度とは2つの制度で成り立っている
マイナンバーは2つの制度で成り立っています。
第一は「行政や地方自治体をつなぐネットワークシステム」です。
マイナンバーにより政府と地方自治体が共同で一つのデータベースを構築するのではなく、今まで各行政ごと、各地方自治体ごとに構築していたデータベースをネットワークでつなげで情報の連携ができるようになることがマイナンバー制度の大きな柱です。
この大きな柱であるネットワークの構築で手間取っており、マイナンバーの運用が進まない原因となっているのです。
第二は「個人ごとに振られるマイナンバー」です。
例えばハローワークでは個人名はカタカナで入力していました。
漢字はデータベースに入っていません。
生年月日とカタカナでの名前が同一なら、同一人物であるとの判断がなされてしまいます。
この様に、各行政ごと、各地方自治体ごとにデータベースの入力する項目やルールが違いますから、マイナンバーを個人ごとに付与して、各行政等のデータベースと関連付けなければ同一人物の特定ができません。
現在マイナンバーは付与されていますが、各行政等のデータベースの関連付けが第一でお話ししたネットワーク構築の遅れからできていない状況にあります。
しかし、国税庁をはじめとする行政は着々と準備を進めています。
3. マイナンバーを収集するケースとは
マイナンバーを収集するケースは以下の3つです。
第一は、マイナンバー制度が開始された時期に在職している社員や取引している個人事業主から収集する場合。
第二は、マイナンバー制度運用開始後新たに採用された社員および取引を開始した個人事業主。
第三は、在職している社員の扶養家族が増えた場合。
個人事業主に関しては支払い区分が「報酬」と「地代家賃」の場合にマイナンバーが必要になってきます。
それ以外の個人事業主の場合にはマイナンバーは必要ありませんので、顧問税理士とご相談ください。
上記3つの事由によりマイナンバーを収集することとなります。
しかし一点例外があり、「扶養控除等申告書」には記載しなければならないということになっています。
4.扶養控除申告書にマイナンバーを記載しないでいい場合とは
企業がマイナンバーを収集する場合には、入社時に収集します。
それを年金や医療保険の手続きや雇用保険の手続きに使います。
マイナンバーをクラウドやパソコン、金庫等に保管するケースが考えられますが、このように保管している場合には一定の要件を満たせばマイナンバーを扶養控除等申告書に記載しないでもいいということになりました。
扶養控除等申告書に記載した場合には、他人に見られないように収取しなければならず企業の負担は大きくなります。
この措置により負担の軽減につながります。
国税庁のホームページのQ&Aには以下の通り記載されています。
以下転載
扶養控除等申告書には、基本的には、従業員等のマイナンバー(個人番号)を記載する必要がありますが、給与支払者が扶養控除等申告書に記載されるべき従業員本人、控除対象配偶者又は控除対象扶養親族等の氏名及びマイナンバー(個人番号)等を記載した帳簿を備えている場合には、その従業員が提出する扶養控除等申告書にはその帳簿に記載されている方のマイナンバー(個人番号)の記載を要しないこととされました。
なお、この帳簿は、次の申告書の提出を受けて作成されたものに限ります。
1 給与所得者の扶養控除等申告書
2 従たる給与についての扶養控除等申告書
3 退職所得の受給に関する申告書
4 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
また、給与支払者が備えている帳簿に記載された従業員等の氏名又はマイナンバー(個人番号)と提出する扶養控除等申告書に記載すべき従業員等の氏名又はマイナンバー(個人番号)とが異なる場合には、マイナンバー(個人番号)の記載を不要とする取扱いをとることはできません。
(注)
1 この取扱いは、平成29年1月1日以後に支払を受けるべき給与等に係る扶養控除等申告書から適用できます。
2 この取扱いは、「従たる給与についての扶養控除等申告書」、「退職所得の受給に関する申告書」及び「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」についても同様です。
以上転載
そして、この帳簿の要件としては以下の通りです。
以下転載
扶養控除等申告書へのマイナンバー(個人番号)の記載を不要とするために備える帳簿には、次の事項を記載する必要があります。
1 扶養控除等申告書に記載されるべき提出者本人、控除対象配偶者、控除対象扶養親族等の氏名、住所及びマイナンバー(個人番号)
2 帳簿の作成に当たり提出を受けた申告書の名称
3 2の申告書の提出年月
以上転載
これがマイナンバーの記載を省略する為の要件となります。
マイナンバー制度については色々なご意見がありますが、制度としては着々と準備されています。
年末調整前にしっかりと確認をしておいていただきたいと思います。