KNOWLEDGE OF PERSONNEL AND LABOR

人事・労務の知識

人事のブレーン社会保険労務士レポート第143号
平成27年最低賃金の改定について

1.はじめに

最低賃金額をいくら引き上げるのか、地方最低賃金審議会で審議をされています。
東京都においては現在の最低賃金額である888円から19円引き上げられ、907円になる予定です。
デフレ脱却のために最低賃金を引き上げると安倍総理は仰っていますが、これは大きな間違いである事はこのメルマガでも取り上げました。
総人件費を増やせない中、最低賃金額を引き上げる事で正社員の賞与が減る。
熟練したパートタイマーの時給の上昇が抑制される。
この結果、お父さんの小遣いは減る、お母さんの時給は上がらない。
高校生の子どもは最低賃金額の上昇により小遣いが増える。
結果として一家の可処分所得は減ってしまう。

この基本的な構図が理解されていない。

そして最低賃金額と生活保護費の比較ですが、生活保護費の水準が適正かどうかの議論がなされていません。

参考の動画をご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=X1y_4Kdj4HM

そして生活保護費と賃金額の比較については所定内賃金額で比較されます。
残業手当無しで生活をしている人はほとんどいません。
ですから所定内賃金に加えて、時間外手当等を合計した額と生活保護費との比
較をしなければ正しい数字が出てきません。

上記動画の手取額を賃金額に換算すると353,636円。
年収で4,243,512円の人と比較をしているのです。
これだけの賃金額をもらっている人は何人いるでしょうか。
最低賃金額を決定する際に生活保護費との比較で決定するわけですから、生活保護費の問題と最低賃金額を引き上げると結果として家庭の可処分所得が減少するということをご理解頂きたいと思います。

ここを政府が正確に理解していないので、中小企業にとって非常に厳しい最低 賃金額になってしまうのです。

この仕組みを読者の皆様にはご理解頂きたいと思います。

2.平成27年最低賃金額の計算

今回の改定で月給換算すると最低賃金額はいくらになるのでしょうか。

888円から19円引き上げられるので907円。

これを月給換算する場合には年平均の月間所定労働時間が必要になります。

年間の所定労働時間の合計を12で除したものです。

週40時間労働で、祝祭日や年末年始休暇等関係ない小売りや外食などは年間の所定労働時間の合計が2085時間近くになりますので、この数字を12で除すと173.75になります。
この173.5に907円を乗じると157,591円が最低賃金額になります。

週休2日で祝祭日も休める業種については年間休日が120日ぐらいありますから240日の労働日に8時間を乗じると1,920時間になります。
これを12で除すと160になりますので、907円×160=145,120円となります。

この様に月給者の最低賃金額の算出は、年間の所定内労働時間の合計を12で除した年平均の月間所定労働時間を求めなければなりません。

年間労働日が160日以下の会社はあまりありませんから概ね145,120円から157.591円の間が最低賃金額となると考えられます。

9円の引き上げですから3,040円から3,301円の引き上げとなります。
運送業や外食、小売りなど拘束時間が長く利幅が少ない業界では非常に厳しい内容となります。

10月より引き上げられる予定ですが、今回は引き上げ額が大きいので1ヶ月早めに皆様にお知らせをして、対策を立てて頂きたいと思い今回のテーマと致しました。

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