KNOWLEDGE OF PERSONNEL AND LABOR

人事・労務の知識

人事のブレーン社会保険労務士レポート第139号
労働基準法における最低年齢について

1.はじめに

労働基準法では、何歳から働けることとなっているのであろうか。
労働基準法第56条で、使用者は、児童が満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならないとしています。

「15歳に達した日以後最初の3月31日」とは中学校を卒業した年度末ということです。
中学校の卒業式を終え、就職先で就労するのは、4月1日以降で無ければ違反となります。

義務教育を終えるまでは働くことを原則として禁止しているのです。

しかし「児童の健康及び福祉に有害ではなく、かつその労働が軽易なものについては、労働基準監督署長の許可を得て働かせることが出来る」とされています。

経営者の方が、短時間労働者の社会保険の適用について正しい知識を持っていなければ、本来加入させなくてもいい労働者を加入させてしまうことになります。
法律的には「加入できない」労働者を加入させるわけですから、加入させなくてはいけない基準を下回る労働者を加入させることは、加入すべき人を加入させないことと同様に法律違反になるのです。
今回はこの点を掘り下げてみたいと思います。

2.年齢確認の義務は使用者に有り

(1)児童の定義
労働基準監督署長の許可が無ければ児童は働かすことが出来ません。
労働基準法で定める児童とは、15歳に達した日以後最初の3月31日までの子どものことです。以下、児童としてお話をします。

また15歳に達した日とは、年齢計算ニ関スル法律により誕生日の前日とされています。
ですから4月1日の誕生日の人は、その年齢に達した日が3月31日の為に、前の学年になるのです。

(2)年齢確認は誰の責任か
児童が年齢を詐称し、それに気づかずに使用してしまった場合には、使用者は責任を問われるのでしょうか。
法律では、児童の年齢を証明するものを事業場に備え付けるとされているので、労働基準法上、労働者の年齢を確認する義務は使用者にあるとされています。

ですから、児童と知らずに雇用した場合の責任は使用者に有り、法的な責任を問われる事になります。
本条違反は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることとなります。
場合によっては児童福祉法や刑法と観念的競合に当たることも考えられます。
通達では以下の通りになっています。
「使用者は満18歳未満の者を使用するについては、その年齢証明書を事業場に備え付けなければならないのであるから労働基準法上労働者の年齢を確認する義務は使用者にあると解される。したがって、使用者は労働者の雇い入れに際してその年齢を確認しなければならず、使用者が満18歳未満であるか疑わしい者について、単純に労働者の申告を信用して、満18歳未満の者の年齢証明書を備え付けなかった場合は、労働基準法57条違反の責を免れず又就業禁止業務に従事せしめた場合には各条違反の責を免れない。」(昭27.2.14基収第52号、昭63.3.14基発第150号・婦発第47号)とされており、本人の申告等で、虚偽の事実が告げられて、悪意なく使用した場合であっても法律違反となるとされています。
しかし同じ通達で「しかし、使用者が労働者の年齢を確認するにあたっては一般に必要とされる程度の注意義務を尽くせば足り、その年齢を必ずしも公文書によって確認する義務はないものと解されるので、その容貌、体格、能力、知能その他より判断して何人が観察しても年少者ではないかと疑念をはさむ余地の全くない者については、その労働者の口頭又は自筆或いは代筆により作成提出した身分書類による申告を基準として判断して使用していても、使用者は労働者の年齢を確認すべき義務を故意に怠ったものとはいえない」とされています。
相当年上に見られる児童が、年齢を詐称した場合には、それを信じたとしても故意に年齢確認を怠ったとはいえないというだけであり、違反は違反なのです。
公文書で確認する事まで求めていないという内容ですが、やはり生年月日と住所氏名については、社会保険等の手続きの関係もありますので、住民票でしっかり確認すべきと思います。

3.児童の就労が例外的に認められる場合

(1)13歳未満の場合
「児童の健康及び福祉に有害ではなく、かつ、その労働が軽易なもの」と判断されれば労働基準監督署長が就労の許可を出す場合があります。
ただし、13歳未満については「映画の製作又は演劇の事業」において子役として活動する様なケース以外は許可を出さないとされています。

(2)児童が就労できない業務とは
労働基準法第62条に規定する満18歳に満たない者に対する危険有害業務の就業制限以外に、以下の業務は就労してはならないとされています。
 1 公衆の娯楽を目的として曲馬又は軽業を行う業務
 2 戸々について、又は道路その他これに準ずる場所において、歌謡、遊芸 その他演技を行う業務
 3 旅館、料理店、飲食店又は娯楽場における業務
 4 エレベータ運転の業務
 5 1から4に掲げるもののほか、厚生労働大臣が定める業務(現在定められてはいない。)

これらの業務に該当せずに、児童の就学を妨げる事はないと事業場を管轄する労働基準監督署長が判断した場合に、就労の許可が下りるのです。
この労働基準監督署長の許可を受ける場合には、「児童の年齢証明書」「児童の修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書」「親権者又は後見人の同意書」を労働基準監督署長に提出する必要があります。
この際、事業場を所轄する労働基準監督署長は、児童の居住地を管轄する労働基準監督署長の意見を聴かなければならないとされています。
児童の意思に反した申請が行われていないか。申請にかかる児童の就業が、その健康及び福祉に有害ではないかどうかの実情を調査することとされています。

4.まとめ

今回は、あまり深く掘り下げていなかった児童について取り上げました。
児童を使用するケースは稀ですが、建設現場などで、稀に年齢を詐称して労働者として働くケースなどがあるようです。
住民票などで年齢をしっかりと確認をしていくことが重要だと思います。

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