人事のブレーン社会保険労務士レポート第125号
降雪時に休業する場合の労働基準法第26条休業手当の考え方
1. はじめに
2週続けて記録的な豪雪にみまわれている関東地方。
始業時刻を繰り下げたり、終業時刻を繰り上げたりと通勤に配慮する経営者の方 が多いと思います。
雪で休業する場合には、また労働時間を短縮する場合には、賃金をどの様に考えるべきなのでしょうか。
今回はこれをテーマといたします。
2. 降雪時に帰宅困難者とならない様な配慮の取り扱い
「雪が降ってくるから早く帰って!」
この様な配慮をする経営者が多かったと思います。
労働契約では決められた労働時間、求められる能力で働くことが労働者の義務となっています。
義務ですから、雪が降ろうと、台風がこようと、地震が起きようと、始業時刻までに出社をし、仕事をする義務があります。
終業時刻も同様です。
本来であれば、終業時刻まで居なければならない労働者を、帰宅困難者とならないように経営者が配慮して終業時刻を切り上げることや、出勤時の混乱を考慮して始業時刻を繰り下げることは、ノーワークノーペイの原則通り、賃金を支払わなくていいのでしょいうか。
判断のポイントは、労働者を働かせないことについて、経営者に帰責事由があるの かどうかです。
この帰責事由の判断に当たっては「労働者が働かない」という債務の履行不能の原因が、以下の2つの要件を満たす必要があります。
第一にその原因が企業の外部より発生したものであること。
第二に、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避ける事の出来ない事故であること。
降雪の影響で交通機関等が混乱し、通勤に影響が生じるという事態は企業の外部より生じたものです。
また、自然災害ですから経営者の回避努力もできません。
よって経営者の帰責事由にならず、労働基準法第26条による休業手当は支払う必要がありません。
3. 休業手当を支払わなければならない場合とは
休業手当を支払わなければならない場合とは以下の2つが考えられます。
第一は、降雪による交通機関の混乱により原材料の到着が遅れ休業する場合。
原材料の到着が遅れるということは、民法上は外部要因として考えるのですが、労働基準法上は内部要因として考えます。
詳しくはメルマガ117号「労働基準法第26条の休業手当と民法の反対給付請求権の関係」をご覧ください。
http://www.yamamoto-roumu.co.jp/knowledge/mg_20130615.html
ですから、降雪により原材料の到着が遅れ休業した場合には休業手当の支払いが必要であると考えます。
第二に、予備的な出勤停止等。
具体的には「今日は雪の予報だから、今は雪が降っていないけど今日は休もう」という場合。
これは実際に雪が降っていないわけですから、「原因」がありません。
この場合には労働者からの請求があれば、休業手当の支払いをしなければならない可能性があります。
4.まとめ
経営者の好意により帰宅困難者とならないように配慮をした場合でも、何か労働者とトラブルが起きた場合には休業手当の請求をされる場合があります。
降雪等の予報が出ている場合で、現実に雪が降っていない場合には、年次有給休暇の取得奨励等を提案することが望ましいと思います。
2週連続の記録的豪雪。 雪をテーマに今回はまとめてみました。