人事のブレーン社会保険労務士レポート第122号
賃金の労働時間の端数処理
1. はじめに
今回は賃金と労働時間の端数処理についてまとめてみたいと思います。
労働時間の集計について一分単位で集計をしなければならないのかという点については平成25年3月15日発信第114号にて「退勤猶予時間の考え方」にまとめてありますのでそちらをご参照下さい。
http://archive.mag2.com/0000121960/20130315060000000.html
労働時間の集計について退勤猶予時間の考え方も重要ですが、もう少し細かい「割増賃金額の算出における端数処理」や「賃金計算期間における労働時間の集計の端数処理」について正確に把握しておくことも重要です。
今回はこの点を掘り下げていこうと思います。
2. 割増賃金計算における賃金額の端数処理
割増賃金は法定労働時間を超えて労働した場合には2割5分、法定休日に労働をさせた場合には3割5分、22時から5時までの時間帯に労働した場合には2割5分の割増賃金を支払うこととされています。
この割増賃金の計算において、通常の労働時間若しくは労働日の一時間あたり賃金額又は一時間あたりの割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円に切り上げて処理する
ことについては、労働基準法違反としては取り扱わないものとされている。
(昭63.3.14基発第150号・婦発第47号)
月額賃金から一時間あたりの賃金額を算出する際と、その賃金額に割増率を乗じた際の端数処理は50銭を基準に四捨五入をして取り扱っても労働基準法に
はならないというものである。
3. 賃金計算期間における労働時間の集計の端数処理
賃金計算期間における「時間外」「休日」「深夜」の総労働時間数に30分未満の端数がある場合にはこれを切り捨て、それ以上の端数がある場合にはこれを1時間に切り上げることの処理を行っても労働基準法にはならないとされています。
これは一日の労働時間については退勤猶予時間を考慮して計算をし、この1日の集計で算出された「時間外」「休日」「深夜」の合計労働時間について、30分を基準として四捨五入を行っても労働基準法違反にならないですよというものです。
一日単位で30分を基準に指定良いよというものではなく、あくまで退勤猶予時間を考慮した上で正確に算出された労働時間を、月でまとめた場合について30分を基準に四捨五入をしていいというものです。
そして見落とされがちな大事な点があります。
この処理をしていいのは「時間外」「休日労働」「深夜」のみだということです。
「所定労働時間」についてはこの処理をしていいとは通達上いっておりません。
労働基準監督官の調査においてはこの点を指摘されることは経験上ありませんが、株式を上場する場合の審査や内部監査などで「所定労働時間」を含めてこの処理をしている場合には、「適法な処理を行っている」という意見は出せま
せん。
ここは注意が必要です。
4.まとめ
内部監査や株式公開時の審査などで専門家としての意見を求められるケースがあります。
また勤怠集計のシステムを構築するにあたっての意見を求められるケースがあります。
この様な際に今回取り上げたテーマの正確な理解は極めて重要になってきます。
特に最後にお話しした賃金計算期間の労働時間集計における30分を基準とした四捨五入については誤解の多い点です。
ご参考にしていただければ幸いです。