人事のブレーン社会保険労務士レポート第121号
年平均月間所定労働時間の求め方
1. はじめに
残業手当の計算方法や月給者の最低賃金の計算方法などで「年平均月間所定労働時間」という言葉が出てきます。
文字通り、年間平均での月の所定労働時間という意味です。
30日の月や31日の月があり、月によって所定労働時間が違うケースが殆どです。
祝日などの関係で、所定労働時間が変動します。
この様に月によって違う所定労働時間の平均値を求めたものが「年平均月間所定労働時間」となります。
具体的に計算方法を考えてみましょう。
2. 週休2日の企業の場合は
(1)週休2日しか休日がない場合
1年間に週の数はいくつあるのでしょうか。
一年は365日。一週間は7日です。
365日から7日を割れば一年間の週の数が出てきます。
365÷7=52.142・・・週です。
週休2日とすると52週×2日=104日
これが年間休日数になります。
1日の所定労働時間を8時間とすると
(365日-104日)×8時間=2,088時間
これが年間の所定労働時間の合計です。
一年の月数である12で割ると
2,088時間÷12ヶ月=173.333・・・
これが週休2日の企業の年平均月間所定労働時間となります。
(2)週休2日と祝日等が休日の場合
所定労働時間が8時間を前提とした場合、週休2日であれば週40時間という使用者の持ち時間をフルに使っていることになります。
一般的な企業ではこの週休2日に祝日や年末年始休暇などが休日として付与されているでしょう。
この様なケースを考えてみましょう。
まず祝日を考えましょう。
国民の祝日に関する法律により15日が祝日とされています。
ここから会社の所定休日となっていて、祝日と重複している休日を15日から控除します。元旦がいい例だと思います。
次に考えるのは夏期休暇や年末年始休暇。
夏期休暇を3日、年末年始休暇を12月29日から1月3日とすると6日。
元旦と重複するので、1日控除しなければなりません。
これを前提に年間の所定労働時間数を求めると以下の式になります。
104日(年間の土曜日及び日曜日の数)+15日(年間の祝日の数)+9日(夏期休暇及び年末年始休暇の数)-1日(年末年始休暇と祝日が重複する祝日数)=127日
これが週休2日の企業の年間休日数です。
土日の数や、所定休日と重複する祝日数、年末年始休暇や夏期休暇等が変動するので実際にご確認をいただきたいのですが、概ね127日とします。
365日から休日数である127日を控除すると238日となります。
238日に1日の所定労働時間である8時間を乗じると1,904時間となります。
これを12で除すと1,904時間÷12ヶ月=156.666・・・となります。
これが年平均の月間所定労働時間となるのです。
前者のケースは多い方で、後者のケースは少ない方です。
概ね156.666から173.333の範囲内で年平均月間所定労働時間が決まります。
実際に土曜日、日曜日の数や祝日と重複する所定休日数、年末年始休暇等は変動しますので、毎年数えなければ正確な数字は出ませんのでご注意下さい。
3. 一ヶ月単位の変形労働時間制
一ヶ月単位の変形労働時間制は、一ヶ月を通じて一週40時間を達成しようとする制度。
賃金計算期間の歴日数を一週間の歴日数である7日で控除し、週の法定労働時間である40時間を乗ずると一ヶ月の法定労働時間が出ます。この範囲内で1日の所定労働時間や一月の労働日を定められる制度です。
・31日の月
1月、3月、5月、7月、8月、10月、12月の7ヶ月
31÷7×40=177.142時間
・30日の月
4月、6月、9月、11月の4ヶ月
30÷7×40=171.428時間
・28日の月
2月
28日÷7×40=160時間
177時間×7ヶ月+171時間×4ヶ月+160時間×1ヶ月
=1,239時間+684時間+160時間
=2,083時間
これが一ヶ月単位の変形労働時間制使った場合の上限になります。
2,083時間÷21日=173.583時間
実際に運用する場合には、この2,083時間をフルに使うことは考えられな
いので、運用上はもう少し少ない数字となるでしょう。
フレックスタイム制についても同様に考える事が出来ます。
4.一年単位の変形労働時間制
一年を通じて一週40時間を達成しようとする制度です。
一年は365日。これに一週間の週の数である7日を除して、一週の法定労働時間である40時間を乗ずれば年間の所定労働時間の上限が出てきます。
365日÷7日×40時間=2,085.714時間
2,085時間÷12ヶ月=173.75時間が上限となります。
この範囲内の収まっていなければ、週40時間を超過していることとなります。
5. まとめ
年平均月間所定労働時間についてはあまり取り上げられることはありませんでした。
最低賃金の上昇により、月給者の最低賃金額の確認をする際に重要な数字です。
また残業代の計算をする際、実際の数字より大きければ、残業単価が低くなり、実際の数字より導き出された数字との差額が未払い賃金になります。
一度しっかりと確認して頂き、実務に役立てていただきたく今回のテーマとしました。