人事のブレーン社会保険労務士レポート第205号
休日の主旨の違いを理解して正しい勤怠集計を行う方法
1.はじめに
雇用調整助成金の申請をきっかけに今までの勤怠管理に疑問を持たれた方が多く、タイムカードの集計に関するご質問が増えております。
前回は正しい給与計算の仕方をお話ししましたが今回は正しい勤怠管理の仕方をお話したいと思います。
2.労働基準法での休日
(1)原則
労働基準法では週に一回休日を付与しなければならないとされております。
ですから労働者に週1日だけ休日を与えていればいいわけです。
この休日を法定休日と呼んでいます。この法定休日に出勤した場合には
1.35の割増率による割増賃金を支払う必要があるのです。
週に一回は休日が必要であり、変形労働時間制においてもこの原則は変わりません。よって週に一回の休日付与は必須になります。
(2)例外1 一年単位の変形労働時間制
一年単位の変形労働時間制を適用している場合には6連続労働を上限としています。
週に1回の休日を与えるとした場合、週の初日と翌週の最終日を休日とすれば12連続労働が可能です。しかし一年単位の変形労働時間制を適用している場合には、一年という長い期間で週40時間を達成するわけですから労働者への負担が多いという観点から6連続労働を上限として規制をしているのです。
(3)例外2 4週4日制
原則として1週1日の法定休日の付与をしなければなりませんが、起算日を明確にして4週ごとに区切りその期間内に4日休日があれば法定休日を付与したこととなります。
起算日は賃金計算期間ごとに変わるものではなく、起算日から4週ごとに期間を区切り計算します。
起算日を変える方がいらっしゃいますがこれは4週4日の休日を満たしたことになりません。
3.なぜ週休2日となるのか
(1)一週40時間の法定労働時間
労働基準法では所定労働時間を一日8時間、一週40時間を上限としています。
この範囲内で働かせることができますから、例えば一日の所定労働時間が6時間30分であった場合には6日労働したとしても39時間となりますから休日は1日でいいわけです。
しかし一日の所定労働時間を8時間とした場合、5日で40時間になってしまいますから5日しか働かせることができません。
労働基準法の休日は1日でいいわけですが、一週40時間を満たすためには一日の休日では足りなくなってしまいます。この休日の差が給与計算を難しくしています。
この一日の差を埋めるために、言い換えれば「一週40時間の範囲内で所定労働時間を設定する為に」付与する休日を所定休日としています。
この所定休日は労働基準法が「休みなさい」と言っている休日ではなく、「週40時間を守りなさい」というルールを守るために付与する休日なのです。
ですから法定休日のルールは関係ありません。
あくまで残業のルールの問題です。
ですから所定休日に出勤した場合には、残業のルール、言い換えれば一週40時間という範囲内で労働をさせなさいというルールを守れなかったわけですから、この日は始業時刻から終業時刻までの間は「残業」ということになるのです。
残業ですから1.25の割増率で割増賃金を支払えばいいわけです。
(2)4週4休制はありません
よく誤解をされているのですが、法定休日では一定の条件を満たせば4週4休は認められ法定休日を付与したことになります。これは「法定休日のルール」です。
週休2日を付与することで一週40時間を守ることができます。
しかしこの2日の休日は前述の通り一日は「法定休日のルール」、もう一日は「残業のルール」で与えており、同じ休日でも根拠条文が違います。同じ休日として法的に同列に考えてはいけないのです。
法定休日は変則的に4週4休は認められていますが、残業のルールで変則が認められるのは「変形労働時間制」のみです。
「一か月単位の変形労働時間制」と「一年単位の変形労働時間制」がありますが、一か月を通じて一週40時間を達成しましょう、一年を通じて一週40時間を達成しましょうという制度です。
28日単位の変形労働時間制という制度はありません。
4週で8日休日を取らせていれば週40時間を達成できていると誤解をされている方はこの点をご理解いただいていないのです。
4週で8日の休日を目安に付与するとしてもこれは一か月単位の変形労働時間制や一年単位の変形労働時間制を使わなくてはできないのです。よってルールとしては変形労働時間制のルールが適用になり、4週8休という視点のみで労働時間を管理していては労働基準法違反となってしまうのです。
週休2日の休日の主旨を理解していないが故の誤解なのです。
4.まとめ
正しい勤怠集計ができていない社会保険労務士もおりますので、非常に奥が深い分野です。
私も20歳代のころ労働時間管理の論文を書く機会をいただいたので理解できましたが、社会保険労務士の国家試験だけでは理解できないと思います。
それぐらいわかりにくい分野ですが、2日の休日の主旨の違いを理解することで正しい勤怠集計ができるようになると思います。
皆様の参考になれば幸いです。