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人事・労務の知識

正しい賃金の決定方法④【営業職の賃金決定方法】

1. 事業場外のみなし労働時間制

営業職をはじめとする、事業場外で労働する労働者の賃金はどのように考えていくべきでしょうか。
労働基準法では、「労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいとき」は、「所定労働時間」や「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」「労働したものとみなす」となっています。
事業場外では、その業務の遂行方法を労働者に委ねざるを得ず、厳格な労働時間管理は出来ないので、事業場外のみなし労働時間制という制度があるわけです。

2. 事業場内の労働の取り扱い

事業場内のみなし労働時間制を導入したとしても、「みなし時間」は事業場外の労働が原則であり、事業場内での労働は別計算にしなければなりません。具体例を示すと図1の通りになります。
1日の所定労働時間が8時間であり、事業場外のみなし労働時間が6時間だったとします。
実際の事業場外労働時間が3時間であっても、6時間として計算します。この日の労働時間が8時間であったとしても、6時間に事業場内労働時間を加えて労働時間の計算をしなければなりません。
「事業場外労働に付随してそれと一体的に事業場内労働が行われる場合には、それら労働は全体として事業場外労働と把握できる」という解釈もありますが、「事業場外労働と付随してそれと一体的」な業務と「それ以外」の業務について、実務上区分することは困難でありますから、事業場内労働については、事業場外労働としてみなした時間に加えて労働時間計算をしなければならないわけです。
直行直帰を常態とする業務以外は、事業場外労働を単独で運用することはなじまないと考えます。

3. 事業場外のみなし労働時間制と定額残業制

では、営業職等の賃金制度はどのようにすれば良いのでしょうか。
方法は2つ考えられます。
第一は、事業場外のみなし労働時間制を導入し、それと併せて、事業場内労働に対する賃金を所謂「定額残業」として組み込む方法です。
定額残業については前回、前々回と詳細にお話を致しました。
たとえば、事業場外のみなし労働時間を1日8時間とし、事業場内での労働を1日1時間とします。
週休2日とし、賃金計算期間に8日の休日があるとすると、賃金計算期間の歴日数31日から8日を控除して23日労働になります。
この23日に先ほどの1時間を乗じると23時間ですので、定額残業手当として23時間分の割増賃金を支給する枠組みにしておけば、事業場内労働については解決するのです。
第二は、事業場外のみなし労働時間制を導入せずに、出勤から退勤までを労働時間とし、賃金を支給します。
この場合においても「定額残業」の考え方を取り入れます。
1日の拘束時間から休憩時間を控除した時間が10時間で、先程と同様に1ヶ月23日出勤した場合、1日の残業時間である2時間に23を乗じて46時間の定額残業手当を支給していれば良いということになります。
この様な対策をせずに「事業場外のみなし労働時間制」を導入していれば、未払い賃金の問題が生じてしまいますのでご注意ください。

4. どちらの枠組みが良いのか

前述した2つの方法については実態に応じて考えていかなければなりません。
毎日一定時間は必ず事業場外労働をするような場合には、第一の方法が良いと考えます。
事業場外と事業場内の出入りが激しく、標準的な事業場外労働を算出できないような実態では、第二の方法が良いと考えます。
実態をよく分析して導入をしてください。

「初出:週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第5回 No.696 2010.4.13号」

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