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人事・労務の知識

正しい賃金の決定方法⑤【管理職と残業手当】

1. 管理職とは

管理職とは、会社が管理職と定義をすれば管理職です。「主任以上が管理職である。」と定義しても、何ら法律に触れることはありません。
問題となるのは、労働基準法第41条第2号に規定する「管理監督者」であるかどうかです。
これに該当すれば、労働時間、休憩及び休日に関する労働基準法に規定は適用されないこととなります。
要するに、深夜勤務手当を除き、残業手当や休日出勤手当を支給する必要がなくなります。

2. 労働基準法第41条第2号に規定する「管理監督者」

これに該当することは非常に高いハードルをクリアしなければなりません。ほぼ中小企業の管理監督者はこのハードルをクリアすることができないという結論が妥当でしょう。
今回は紙面の関係で、管理監督者の要件の詳細を述べませんが、通達や日本マクドナルド事件の裁判例をまとめると概要は以下の通りです。

  • ①管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者と一体的な立場において、同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動をすることを要請されてもやむを得ないというような重要な職務と権限を付与されていること。
    主たる業務が高度な経営判断や顧客との交渉、従業員の全社的な管理等を行っており、労働時間を管理して、その時間の賃金を支払うことがなじまない経営層に限られます。
    全社的な経営方針を決定する会議において、陪席ではなく議決権のある構成員であることや始業、終業の時刻に拘束されることなく自らの裁量で業務を遂行できること等であります。
    人事権についても、採用や人事考課についての最終的な権限を持ち、解雇の権限も有していることが通達では求められている。
  • ②待遇
    経営者と一体である立場にふさわしい賃金水準であること。経営者は欠勤や遅刻早退について賃金控除は一般的にはされませんから、管理監督者についても同様に控除されないことが求められます。また、管理監督者になる前の賃金と比較して遜色ない賃金水準であること。当然ですが管理監督者になる前の賃金額の方が高い、いわゆる逆転現象などが発生していないこと。日本マクドナルド事件の判決文の中で「全体の40%を占めるB評価の店長と一般社員との賃金の差は年収で44万6943円にとどまっており」とし、裁判所はこの差額では少ないと判断しています。
  • ③業務内容
    ①や②と重複しますが、一般社員と同様な業務を行っていないこと。例えば、外食産業において店長が店舗においてアルバイトや一般社員と同様にシフトに長時間入っている場合やマニュアル化されている業務に長時間就く場合には、管理監督者性を否定される要素となります。

3. 管理監督者の範囲を明確にすることの困難さ

前述のように管理監督者についての通達は抽象的ですし、裁判例は個別企業の事情により判断されますから、他の企業にその裁判例がそのまま適用することはできません。管理監督者とは個別企業の実態に即して判断しなければなりません。同じような組織であっても、社長がワンマンか否かで管理監督者の範囲が違ってきます。
通達で具体的に示そうとしても、「ワンマン社長」の定義づけから始まり困難であります。

4. 役職手当と定額残業

ここまでは難しい話をしましたが、経営者の求めることは労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者に該当するかどうかではありません。
労働時間の長さに関係なく、その職責により賃金額を決定したいという事ではないでしょうか。
この解決方法として、この連載で詳しくお話をさせていただいている定額残業手当の考え方を応用します。
役職手当を「時間外手当の代わりとして支給する」として、その役職者の時間外労働の実態を踏まえ、役職手当の額を決定すれば、仮に労働基準法による管理監督者に該当しなくても、職責により賃金額を決定することができるようになります。
管理監督者として判断されない場合には、定額残業と同様に、その超過した残業時間の清算が必要になりますが、超過しないような業務管理の実施や超過しない水準で役職手当を決定することで解決することができます。
これも残業の予算化の一環であり、しっかりと仕組みを作っていかなければなりません。

「週刊帝国ニュース東京多摩版 知っておきたい人事の知識 第6回 No.699 2010.5.11号」

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