KNOWLEDGE OF PERSONNEL AND LABOR

人事・労務の知識

人事のブレーン社会保険労務士レポート第173号
救急医療と教員の働き方改革の問題点

1.はじめに

働き方改革の波は色々な職種に押し寄せており労働時間短縮の流れは止めることが出来ません。
しかし一方で「救急医療」「教育」といった分野において労働基準行政だけで判断されていることにより我々の生活に支障が出ている分野、これから支障が出てくるであろう分野があります。
今回はこの点を掘り下げてみたいと思います。

2.医師と働き方改革

医師といえども労働者であり長時間労働の問題は避けて通ることは出来ません。
しかし救急医療の現場では命を支える大事な存在であり、医師の労働時間短縮により出勤している医師の数が減り救急車の受け入れに支障が出ているという問題があります。
医師の労働時間の問題は解決する問題でありますが、急に舵を切ることで救える命が救えない社会をどの様に考えるのか。
この議論がなければなりません。
救急医療の質と量を確保した上で医師の働き方改革を目指していかなければならないのです。
労働基準行政では「労働時間が長い」というだけで悪になります。
しかし長時間労働のお陰で多くの命を救っている事の評価をどうするのか。これは政治の問題です。

開業医と勤務医の問題。
診療報酬等を通じて救急医療に携わる医師の数を確保しながら医師の働き方改革を進めなくてはなりません。

そもそもなんで医師になったのか。
医師の社会的使命は何なのか。
そして働き方改革をいま進めることにより救える命が救えなくなる。
この議論をしっかりと行わなくてはなりません。

これなくして行う働き方改革は「救える命を救わない」という選択を政府が行った。
そして我々国民は追認した。
この様な結論になってしまいます。

3.教員と働き方改革

中学校や高校の思い出の多くは部活動という方も多いのではないでしょうか。
私も部活動を通じて人間関係の大事なことを学びました。
小学校2年生からやっていた少年野球でも同様です。
教育現場でも働き方改革の波は押し寄せてきていますが、部活動の指導が悪者にされる傾向があります。
部活動の指導は大変でありますが、中学校、高校では欠かせない大事な教育です。
愚息の部活の顧問は野球部の顧問をやりたくて教員になった先生ですから熱心に指導して頂いています。
親として学校に何を望むかというと、やはり中学受験をしなくても小学生から塾通いをする子供が多い現状では学力の向上はあまり多くは望みません。
部活動を通じて社会に出てから必要となる人間関係や理不尽なことを乗り越える力を学んで欲しいと思います。
教員の働き方改革を否定するつもりはありませんが、そもそも「教育とは何か」「部活動の教育的役割」をしっかりと議論をしていかなければそもそも学校とは何かという大事な問題を置き去りにしてしまいます。
そもそも「なんで教員になったの?」と問いかけたくなる方向には進んで欲しくないですね。

4.まとめ

働き方改革については否定しません。
しかし今回取り上げた「救急医療」や「教員」の問題は、そもそもの仕組みを壊してしまう結果になります。
救急医療の崩壊は避けなければなりません。

労働基準行政とどの様につじつまを合わせるのか。
即ち、例外としての業種を設けることが出来るのか。
政治の力でしか解決できない問題です。

是非皆様この点を踏まえて働き方改革について問題提起して頂ければ幸いです。

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