人事のブレーン社会保険労務士レポート第115号
定年延長と助成金
1. はじめに
平成25年4月1日から高年齢者雇用安定法が改正されました。60歳定年で65歳まで再雇用とする枠組みは変わっていません。この改正内容については平成24年11月15日発行のメルマガ110号で詳しく書いてありますのでご覧下さい。
この法改正を機に助成金をもらって定年延長をするという企業があります。今日はこの点についてお話ししたいと思います。
2. 助成金とは
助成金とはそもそも国の政策を誘導するために、企業が政府の政策に合致した施策をした際にもらえるものです。「ただでもらえるお金」と考えてらっしゃる方もおりますが大きな間違いです。助成金自体は変換する必要がありませんので、返済の必要性という観点からは「ただ」と考えても間違いではありません。しかし、収支で考えると大きな落とし穴があります。
3. 収支で赤字になりかねない助成金
定年というのは、労働者が一度退職します。そして再雇用され、新たな労働条件で勤務をします。60歳で定年を迎え、62歳まではフルタイムで勤務し、63歳からは週3日で勤務をする。こんな働き方をしている再雇用者も少なくありません。定年後の再雇用の時点で、賃金の見直しを行い、60歳前の賃金水準より引き下げる企業が多いのです。
ですから人件費の抑制という観点では60歳定年で65歳まで再雇用という枠組みが望ましいのです。年収600万円だった社員が定年退職し、年収350万円で再雇用をしました。ここで250万円の人件費抑制が出来ました。では65歳まで定年延長をした場合はどうでしょう。役職定年制度などで対応しても人件費抑制効果は限られています。定年延長である以上、社員の身分を嘱託にして、月給制を時給制に、フルタイムから週3日勤務へという労働条件の大幅な変更が難しいからです。
定年を65歳まで延長して助成金60万円をもらっても収支は合いません。
助成金とは返さなくてもよいお金ですが、収支という観点で見たら大きな赤字を生むものなのです。この点をしっかりと理解されずに助成金の申請をされている企業が増えています。
助成金のリスクをしっかりと検討した上で進めていって頂きたいと思います。